TREMOLO [ANNEX]

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七天神像と感覚が繋がってしまった風神の話



 以前から―――もうどれぐらい前からなんて覚えてもいないぐらい昔から、璃月を訪れては岩神の七天神像に想いを込めて触れていたと暴露するウェンティ。
 勢いに任せて全て言い終わった後、冷静になった思考でそもそも鍾離は本当にこれらを知っていたのだろうか? と疑問が生じた。
 旅人に知られた直後だということもあり、想いが鍾離にバレたと思い込んでいたのだが、そもそもが間違いだったのでは? と。
 もしそうなら、最悪だ。何も知らなかった鍾離にわざわざ自ら全てをぶちまけてしまったのだから。
 鍾離がどんな顔をしているか確かめるのは簡単だ。だが、どうしてもその『簡単』な動きをとることができなかった。
 俯き、彼の第一声を待つこの時間は永遠にも似た絶望だ。おそらくこの時のことを自分は一生忘れないだろう。
「どういうことだ?」
 長い長い沈黙の後、耳に届いたのは困惑を隠さない鍾離の声だった。
 ビクッと肩を震わせるウェンティ。届いた音や言葉がどんなものであっても、拒絶を予期していた彼には恐ろしいものだったのだろう。
 だがしかし鍾離が続けた言葉に俯いていた顔が弾かれたように挙げられた。
「何故今更それを引き合いに出す? 互いを想い七天神像へと口づけている事がどうしてそれを『止める』理由になる?」
「え……」
「俺が聞いているのは、七天神像への口づけを止める『理由』だ。お前が今語ったのは、口づけている理由だろう?」
 返答は端的にしろと昔から言っているだろうが。
 そう苦笑を漏らす鍾離は腕を伸ばし、頬に触れてくる。
「……先の言葉は、いずれも『過去』を語っていなかった。お前の心がまだ俺にあるというのなら、何故『止める』などと言うんだ?」
「ま、て……、待って、待って待って待ってっ」
「バルバトス?」
「ど、どういうこと!? 旅人に、旅人に聞いたから、聞いたからわざわざモンドまで『諦めろ』って言いに来たんじゃないの!?」
 頬を撫でる手のぬくもりを感じながらも、自分はまだ妄想の世界に囚われているのかと自身に恐怖を覚えるウェンティ。
 彼は鍾離の手から逃れるように後ずさり、訳が分からないと取り乱す。
(どういうこと!? ねぇ、どういうこと!?)
 口に出していない問いかけに応えて応えてくれる者など誰もいない。
 しかし目の前には、問いかけの『答え』こそ与えることはできないものの、限りなくそれに近い言葉を持つ存在が居るわけで―――。
「……バルバトス」
「な、何……?」
「一つ尋ねるが、お前は我々がそれぞれの七天神像と共鳴することができることを知っているか?」
「は……? な、何……? 『共鳴』……?」
 どうやら投げかけられた質問の意味が分からず鸚鵡返しすらできない程思考が停止してしまったようだ。
 零れ落ちそうなほど翡翠を見開いているウェンティの目に映るのは、「どういうことだ……」と頭を抱える鍾離の姿。



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2024-06-03 公開



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