「お前も七天神像と繋がっているのだろう?」
「七天神像と繋がってるって、何が……? モラクス、君はいったい何の話をしてるの?」
問われた言葉の意味が分からない。
いや、言葉自体の意味は分かるのだが、彼が言っているのは娯楽小説の世界の話か何かだろうか?
意味が分からないと眉を下げるウェンティ。
鍾離はそれはそれは盛大な溜め息を吐いてくれるから、逃げ切れなくてもいいから今すぐこの場から立ち去りたいと思った。思うだけで足は動いてくれないのだが。
「……七天神像は、七神を表したものだ」
「それは、分かってるよ……?」
「ならば代替わりが起こると七神像が変化することも知っているな?」
「うん」
「つまり、七天神像は七神と呼応しているということになる」
「うん」
そうだねと頷けば、ジトっとした視線を向けられる。
何故此処まで言って分からないだと言いたげなその眼差しに、だって……と反論するように視線を下げた。
「俺達七神は、意識を七天神像に共鳴することができる。それにより、五感すべてが七天神像と繋がるんだ」
「……え? ご、五感が? 繋がるの?」
「そうだ」
否定の言葉を求めて顔を挙げれば、肯定の頷きが返って来る。
ウェンティの脳裏に過るのは、自分がこれまで何度も何度も繰り返してきた『祈り』。
誰にも気づかれることはないだろうと思っていたその『祈り』は、あろうことか本人にバレていた。
しかも五感が繋がるということはつまり―――。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「!? まて!!」
「やだ! やだやだやだ!! 放して!! 放してお願い!!!!」
「落ち着けバルバトス!」
「無理無理無理ぃぃ!! お願いだからボクのことは忘れて!! アレはボクじゃない誰かだから!! ボクじゃなくて、きっとあれは誰かに操られていただけだからぁぁ!!」
この『祈り』は、自分だけの秘密。だからこそ大胆にもなれたのに、それら全てが鍾離に筒抜けだったなんてひどすぎる。
ウェンティは、もう無理消えたいと顔を真っ赤にして叫んでいる。
今にも飛んで逃げてしまいそうな彼を繋ぎ止めているのは鍾離の手だが、羞恥のあまり暴れまくっているウェンティはいつその手を振り払うか分からない。
このままでは逃げられると思ったのか、怒声にも似た大きな声で名を読んでくる鍾離。
その声にぴたりと動きを止めるウェンティは翡翠涙を浮かべたまま今にも泣き出しそうな表情で鍾離を振り返った。
だが、彼の顔を見るよりも先に視界は真っ暗になった。
何事かと混乱する頭が鍾離に抱きしめられていると理解するにはまだまだ時間がかかりそうだ。