先を歩く鍾離の後を追うように歩みを進める空とパイモン。
ただ歩いている後姿だけでも漂う気品と神々しさに、やはり彼は何処までも岩神なのだと気が引き締まる。
しかし、振り返ることなく黙々と歩く鍾離が人の気配が全くしない街外れでも止まらなかったら、後姿に感心している場合ではなくなってしまうというものだ。
「しょ、鍾離先生! ちょっと待って!?」
「! むっ……」
このままでは璃月港から出てしまう。まさか荒野で自分達を粛正する気なのだろうか?
そんな不穏な事を考えてしまうほど、いつもと様子が違う鍾離に慌てる空。
彼の制止の声に足を止める鍾離が漏らすのは驚きの滲んだ声で、こんな場所まで来ていたのか……と零された独り言から彼にとっても自身の行動は予想外だったことを知る。
「先生、あの、大丈夫……?」
「ああ……、すまない、旅人。心配ない」
「『心配ない』事は無いと思うけど……、そんなに話し辛いことなら、無理に聞かないよ?」
気にならないと言えば嘘になるが、相手の本意でない真相の開示は求めていない。
空は何やら難しい顔をしている鍾離に苦笑いを見せ、話せるようになったら話してくれたら嬉しい。と、今はその時ではないことに理解を示した。
だがそんな空の気遣いに鍾離は「説明が難しい」と苦笑いを返し、無理に話そうとしているわけではないことを告げてきた。
「うーん……。なら、今鍾離先生が思ってることを話してよ。俺達に理解できるできないは気にせず、ね?」
「すまない。そうだな……」
どうやら話したくないと言うわけではないようだ。
鍾離の気持ちを汲み取った空は、巧い言葉での説明ではなく、思うままに話してそれに対して疑問を自分達がぶつけていく形ではどうだろうかと提案した。
少し考えこむ素振りを見せる鍾離は、何やら決意したように「ありがたくその申し出に乗らせてもらう」と笑ってみせた。
友人の思い詰めたような顔は、見たくない。
だから鍾離の表情に安堵する空だったが、初めからとんでもない真実が飛び出て思わず会話を遮ってしまった。
「ちょ、ちょっと待って!! ちょっと待って鍾離先生!!」
「む? どうした?」
「『どうした』じゃなくてっ!!」
さも当然に話を続ける男性にストップをかける空は、返ってきた不思議そうな顔に自分の反応が間違っているのかと失言に怯える相棒を振り返った。
すると、先程まで何も言わないぞと口を一文字に結んでいたパイモンはあんぐりと大口を開けていて、まさに驚愕といった様子だ。
良かった。これは常識では無かったようだ。
そう安堵したのも束の間、我慢の限界とばかりにパイモンが大声で鍾離に疑問をぶつけていた。
「七天神像と感覚が共有されてるってどういうことだよ!? そんなの初耳だぞ!?」
「ああ、そうか。お前たちは七神ではないから知らなくて当然だな」
「いや……、いやいやいや! 七神じゃないからってことじゃなくてね!?」
なるほど、失念していた。
興味深そうに納得を示している鍾離だが、空とパイモンは知り得た事実に様々な疑問が渦巻いてそれどころではない。