「共有されていると言っても、常にと言うわけではない。自分が意識を向けることで一時的に神像に入り込むことができると言った方が正しいな」
丁寧に説明してくれるのはありがたい。ありがたいが、今じゃない。驚きと疑問で碌に頭に入ってこないのだから。
まさかそれが狙いなのでは? と疑うレベルで次々と新事実を話す鍾離に、空とパイモンは一時中断を求めた。
「む?」
「ごめん。でもちょっと整理させて。今俺、凄く混乱してる」
「オイラもだ」
頭を抱え、告げられた真実を一旦整理する空とパイモン。
最初はぶつぶつと独り言を零して各々情報を整理しているのだが、気が付けばお互いの考えを交換してるからなんとも息の合った相棒だと思わされる。
「つまり鍾離は自分が七天神像と意識を繋ごうと思ったら繋げるってことだよな?」
「ああ。そうだ」
「感覚が共有されるって言ったけど、どんなふうに?」
「五感全てが共有される。尤も、食事をとることは不可能だから味覚は定かではないがな」
味覚以外の感覚は共有されると言う鍾離に、それは凄いと素直に感嘆する空。だがそんな相棒を余所にパイモンは何やら難しい顔をしていた。
それに気付いた鍾離が見せるのは苦笑い。
空は視線を合わせている二人の表情の理由が分からず鍾離とパイモンを交互に見た。
視線に気付いてるだろうパイモンは何も言わず、鍾離を睨んでいるようにも見える。
そしてその視線を受け止める鍾離はというと、変わらず苦笑いを浮かべているが、空の困惑に気付いたのだろう。肩を竦ませ視線をパイモンから外すと説明してくれた。
「流石女児だな。着眼が男児とは違う」
「どういうこと?」
「つまり―――、パイモンは俺がバルバトスの祈りを知っているかどうか、知りたいのだろう?」
「! あ……」
苦笑を濃くしてパイモンの視線の理由を教えてくれる鍾離に、空も思い出す。数日前に目撃した、友人の姿を。
そしてその説明こそが答えだと言うことに気付き、思わず鍾離に詰め寄ってしまった。
「ウェンティの気持ちを知ってたの!?」
「落ち着け、旅人」
「落ち着いてなんていられないよ!! 鍾離先生、どうなの!?」
近いぞと両手で接近を拒絶されるも関係ない。
それを無視して更に前のめりになれば、鍾離の身体は後ろに反って苦笑いもいっそう深くなる。
「旅人」
「パイモン、止めないで!」
これは友達の―――ウェンティの秘めた恋心に対する冒涜だ!
そう怒りを露わにする空に鍾離が返すのは「何故冒涜なんだ」という不思議そうな声だった。