「『何故』って―――」
「アレも七神の一人だ。七天神像と感覚が共有できることは知っているはずだが?」
だから秘めた恋心ではないから冒涜ではない。
そう持論を展開する鍾離に空はそういう問題ではないと声を荒げた。
だが鍾離を責めながらも確かに一理あると思ってしまったのは、ウェンティの恋心が『秘めた想い』であるかどうか分からないからだ。
いや、自分達にはそう言っていたから言葉に嘘はないと信じたい。
しかし鍾離の話が本当であれば、ウェンティも風神像と感覚共有ができると知っており、また、鍾離が岩神像と感覚が共有される事があることも知っている事になる。
そうなると、つまり以前見かけた岩神像への口づけは、鍾離へのアピールと言うことだろうか?
(いやいやいや。それは無い。だってそれなら俺達にバレてあんな蒼い顔しないはずだ)
思い出すのはこの世の終わりを迎えたような友人の表情。あれは演技ではなく、真に迫るものだった。
空は鍾離の反論に顎に手を当て考えると、「確認なんだけど」と口を開いた。
「鍾離先生は、それをどうやって知ったの? 誰かに教えられて? それとも―――」
「誰に教えられたわけではなく、彼の地を思い描いた際に意識が繋がった。その後検証を重ね、確信に至った」
「なるほど……」
つまり、偶然それに気付いたと言うことか。
(……うん、これ、知ってるの鍾離先生だけだ。絶対)
鍾離の話を聞く限り、おそらく彼も偶々知ることになっただけだろう。
そう確信した空は、ウェンティはこの事実を知らないと言うことも確信した。
「鍾離先生」
「なんだ?」
「鍾離先生は―――、……鍾離先生はウェンティが先生の事をどう思っていると思ってるの?」
ぶつけたのは直球の疑問だ。
真っ直ぐ彼を見つめる空は、自分のまなざしが鬼気迫るものになっているだろうと自覚していた。
鍾離もウェンティも大切な友人だ。どちらがより大切かなどと言うつもりは無いし、そもそもそれを考えたこともないのだが、今はウェンティの味方でありたいと思っている。
不器用な風神様の片想い。それはただ彼の傍に居たいといういじらしいもので、決して報われたいと願うことなどない秘めた想いだった。
ただ彼の――鍾離の友として、鍾離がありのままの自分で接することのできる存在で在りたいと願うウェンティは、どんな思いで彼と軽口を言い合い、どんな想いで彼の七天神像に口付けていたのだろう。
考えるだけで、切なくて胸が痛くなる。
(鍾離先生はどうしてウェンティと向き合わないんだ? 誤解にせよ、ウェンティが自分に想いをアピールしてるって思っているはずなのに)
投げた疑問の答えは分かり切っていた。だから次の質問を用意した空は、鍾離の返事をただ黙って待つ。