TREMOLO [ANNEX]

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七天神像と感覚が繋がっている岩神の話



 言われた言葉に驚く空は博識な男が告げた方向へと視線を向ける。だが、残念ながら空にはその兆しすら感じ取ることができなかった。
 武神と呼ばれた魔神程ではないにしろ、空もかなりの手練れだ。
 鍾離が警戒するほどの脅威であれば、もう少し感じ取れると思っていただけにこの差は正直恥ずかしかった。
「やっぱり凄いね、鍾離先生。俺には不穏な要素なんて全く感じ取れない」
「いや、これは感じ取ったわけでは――――」
「? 鍾離先生?」
 自分の力不足を素直に認め、相手を称賛する空。
 称賛された当の本人はその言葉を否定するのだが、その言葉があまりにも不自然に途切れたためまた訝しく思ってしまう。
 何故なら、鍾離はあからさまに『しまった』と言わんばかりの表情で己の口元を手で覆い隠したからだ。
 己の失言に気付き、言葉を止めた。
 そんな雰囲気に、意味が分からない空はまた鍾離を呼んで説明を求めるのだが、如何せん緊迫した状況である事は確かなのだろう。
 鍾離は先に問題を解決して欲しいと苦笑いを浮かべた。
「分かった。他ならぬ鍾離先生の頼みだからね」
「ありがとう、旅人。……それまでには説明できるよう言葉を探しておく」
「うん。お願い」
 鍾離は本当に謎に満ちている。
 そんなことを思いながらパイモンを振り返ると、急いでこの先にある岩神モラクスの七天神像のもとに向かおうと伝えた。
 パイモンは無言のまま数回頷き、駆けだす空を追いかけるように鍾離の隣を通り過ぎた。
 やがて、鍾離の姿が振り返っても見えなくなった頃、漸く相棒が口を開いた。
「オイラ、変なこと言ってなかったか!?」
 駆ける空はパイモンの縋りつくような表情に苦笑し、失言は無かったことを伝えた。
 その返答に安堵する彼女だが、続く「でも態度で色々バレバレだった」の言葉にひぃっと顔を青褪めさせる。
 どうしようと器用に浮遊しながら取り乱すパイモンに空はとりあえず頼まれごとを解決してから話そうと速度を上げた。
「見ろ旅人! あれ、宝盗団じゃないか?」
「! 誰か襲われてるっ!」
 七天神像が祀られた広場に辿り着いた時、二人の目に入ってきたのは複数人の賊に囲まれ怯えている商人と傷だらけで剣を構える2人の護衛の姿だった。
 おそらく彼らの商売道具を狙っての襲撃だろう。
 空は考える事は後回しにして一先ず三人を救出すべく大地を蹴った。
 突然現れた旋風に、宝盗団の怒声が響く。だが、それを無視して次々と彼らを粛正してゆく空の姿はまさに鬼神だった。
 一人、また一人倒れてゆく仲間の姿に、「覚えてろ!」と負け犬よろしくな台詞を吐いて宝盗団が撤退したのは、空の奇襲からほんの数分後の出来事だ。



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2024-04-28 公開



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